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スポーツ医科学(スポーツと足首のねん挫)

橋本 幸生(橋本整形外科)
 関節周辺のけがで受診した際に、レントゲン写真で「骨折がない」と安心する患者さんが見られますが、これはじん帯損傷の怖さ、治療の難しさを知らないからでしょう。骨折がなくてもじん帯の損傷はないとはいえません。足首のねんざはスポーツ活動以外の日常生活においてもしばしばみられ、しかも四肢の関節の中で最も多いけがです。関節の正常な動きを超える過度な動きが強制されて起こるじん帯や関節包などの損傷です。
 じん帯の損傷は程度により、じん帯繊維の小損傷(T度)、部分断裂(U度)、完全断裂(V度)に分けられます。特に損傷を生じやすい部分は足関節外側のじん帯で、内がえしの外力によって生じます。内側のじん帯損傷は外返しの外力によって生じますが、じん帯が丈夫なため完全断列はまれです。V度のじん帯損傷やT、U度のじん帯損傷でも繰り返すと、関節のゆるみを招き、将来関節変形の原因になり、痛み、はれ、関節の動きの制限が起こります。その結果、スポーツ活動だけでなく正座などの日常生活にも不自由をきたすようになるため、早期の的確な診断と治療が必要です。
 損傷の程度の診断は受傷時の状況や足関節局所の状態、さらにレントゲン写真から行われます。特にレントゲン写真での足関節の異常なゆるみの確認が 必要です。治療の原則は足関節の異常なゆるみを残さないようにすることです。初期治療としては安静、冷却、圧迫、高挙(RICE療法)を行いますが、その後は大きく保存療法と手術治療に分けられます。損傷の程度や年齢、性別などから総合的に判断して治療法を選択しますが、活動の激しいスポーツ選手やV度の損傷では手術治療が必要となることもあります。しかし、保存療法でも十分に良好な結果が得られ、T、U度のねん挫ではテーピングによる治療でも可能で、再ねん挫の予防としても一般化しています。
 しかし、T、U度でも早期に運動を行うと、損傷部にどん痛が出現したり、ねん挫を繰り返すため、運動制限は必要となります。V度のねん挫では手術以外ではギプス固定が必ず必要となり、損傷したじん帯は緊張した状態で修復されます。固定期間が過ぎたら平地歩行から始めて段階的に時間をかけて運動量を増していき、再ねん挫をきたさないようにすることが大切です。
 さらに運動時のねん挫予防のためにはじん帯にかかる過度なストレスを予防できる装具装着や足首の筋力強化も重要となります。あせらずに確実に治していくことが大切です。