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スポーツ医科学(腰椎部のスポーツ外傷と障害)

佐々木 晃(太田病院整形外科)
@腰椎部のスポーツ外傷
 スポーツによるせき椎の外傷は、頚椎部に多く発生し、腰椎部では少なく、骨折、せき髄損傷、ねんざ等があり、原因種目としては、格闘技、ダイビング、スキーでの転落等で発生します。この中で、骨折、脱きゅうを問わずせき髄損傷がもっとも重症で、以後の選手生命を完全に断つこともしばしば見られます。したがって、受傷直後の損傷チェックと体位保持、同体位での固定、移動が二次的障害発生予防の大きなポイントといわれています。
 治療に関しては、絶対的な方法はなく、いかに早期に固定し、リハビリテーションを開始するかに集約されます。予防は、発生原因を取り除くことであり、せき髄運動の特殊性すなわち、伸展、屈曲、回旋、軸圧迫が過度に発生しないような注意(不注意、自信過剰、未熟練、その他不可抗力)を常に考慮(ストレッチを含めた筋力トレーニングを積む)することが大切です。さらに、競技環境の整備、ルール遵守、天候への配慮等により予防が的確に行われることも必要と考えます。
A腰椎部のスポーツ障害
 正常なスポーツ活動では〔運動→疲労→休息→回復〕のサイクルがあります。腰椎の運動方向は先ほど述べたように、屈曲〜伸展、側方屈曲、回旋が代表的であり、さらにそれらの複合運動に軸方向運動が加わっておこります。これらに過剰な力が何度も加えられ、休息が不十分な時、生理的な微少断裂が限界を超え、障害が発生します。
(1)腰痛症
 急性腰痛症はスポーツ動作、重量物挙等が原因で、腰部の軟部組織、関節周辺に異常が発生します。慢性腰痛症はスポーツ疲労、不自然な姿勢で発生します。
(2)せき椎分離状
 腰の回旋が強く要請される種目(野球、テニス、バスケット、陸上、柔道等)で、少年期において激しいスポーツ活動や、高度なスポーツ技術を行うことが密接に関与します。
(3)腰部椎間板ヘルニア
 運動ユニットである椎間板は、スポーツによる腰部運動量の大きな下部腰椎に、大きなストレスが加わり、椎間板内圧による髄核(クッション)の移動、脱失により発生します。
 このように、スポーツによる外傷障害は多様でオーバーユースを含めた予防が大切です。