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スポーツ医科学(スポーツ障害の原因と予防)

喜久生 明男(きくいけ整形外科)
 スポーツ障害の原因としては@個人の身体特性の違いA運動量の増加B自己の手入れが悪いこと−の3点が重要であり、これらが互いに関連しあって障害を起こします。
 個人の身体特性には筋力、持久力、瞬発力などの個人的な運動能力のほかに骨折の軸や関節の柔らかさが関係します。下肢における骨折の軸異常にはO脚や偏平足などがあり、特に偏平足は脛(すね)の痛みや足の内側の痛みとの関連があります。このような時には踵(かかと)の裏で矯正したり、土踏まずや横アーチを造ることで矯正できます。足や脛の痛みにはこのような矯正で悩みを解消することも可能ですのでぜひ、専門医のチェックを受けてください。
 運動量の増加による障害は運動量の増加に対応できない筋力や骨格の弱さを意味しており、基礎体力の向上を考える必要があります。指導者は全員が同じ体力でないことを知り、個人個人に見合った練習と障害の早期発見に注意することが大切になります。
 自己の手入れが悪いとは、毎日の練習前後の十分なストレッチで筋肉の拘縮(筋疲労や隠れた肉離れ等で硬くなっている状態)を予防しうるのに、手入れを怠ったために、筋肉、じん帯、関節を痛めてしまうことをいいます。ひざの周囲の障害ではなんと約30%がこの自己の手入れ不足によるといわれています。
 障害を起こした後は必ず筋萎縮(筋肉が弱ってやせている)がおこります。よく注意しないと練習を再開してもすぐにまた障害を起こしてしまいます。障害を起こした後は、必ず筋力トレーニングより筋力の回復をはかることが大切です。これも自己の身体の手入れといえます。
 主なスポーツ障害の原因と予防について述べてきましたが、これらの障害原因に注目すれば障害はかなり減らせると思われます。スポーツ障害の予防に大切なことは毎日の自分の身体の手入れにほかなりません。
 いい選手にけがや故障が少ないのは、ごく当たり前の、毎日の手入れをしっかり行っているからなのです。すなわち、1日の疲労を早く、確実にその日のうちになくすためには練習前後のウォームアップやクールダウン、自分に必要なストレッチや筋力強化を一生懸命やることなのです。