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スポーツ医科学(頭部への障害)

山田 實紘(木沢記念病院)
 スポーツの目的は多様であり、プロとしての生活手段としての野球、サッカーなどやオリンピックに象徴されるアマチュアスポーツ、さらには学校教育の一環として行われる各種スポーツなどがあり、娯楽のためのスポーツもある。そういったスポーツ環境の中でスポーツによる外傷はあらゆる年齢層で生じ、また男女の別なく起こり得る。中でも頭部外傷は生命に直結するものであり例え、救命できたとしても、脳障害により大きな後遺症を残すことがある。よってスポーツには外傷が付き物だという考えを改め、できうる限り事故の発生を予防し、不幸にして生じた頭部外傷に対して可能な限り被害を最小限に止めるようにすべきである。
 それに対しての応急処置、注意事項で最も大切なのは、意識障害の判定である。意識が一時的になくなっても5分以内に戻り、正しい呼吸をしていれば軽い脳しんとうである場合が多いから心配ない。しかし、意識がなくなり、呼吸が乱れたり、いびきをかいたり、けいれんを伴う場合は脳挫傷や頭蓋内出血の可能性が高いため、可急に専門医のところに運ぶ必要がある。
 ここで代表的な頭部外傷の種類を紹介してみよう。脳しんとうは最も高い頻度で発生するが、一過性の意識喪失で改善する。この場合はそう慌てることなく後から精密検査をすればよい。頭蓋骨折は、単なる骨折では大事にいたらないが、場合によっては骨折により血管の破錠が生じ、これを放置すると致死といたるので、意識があるからといって安心できない。
 急性硬膜下血腫は、頭部への強い衝撃、全力疾走中の転倒、高所からの転落または激しい衝突により出現する。頭蓋骨への架橋静脈の断裂による出血で、進行が早く、スポーツによる頭部外傷の死因の第一を占める。これらの血腫には一刻も早い手術が必要である。
 最近は高齢者のスポーツも盛んになってきており、大いに歓迎されるところであるが、高齢者に特有なものとして慢性硬膜下血腫が挙げられる。これはほんの軽度な頭部外傷でも2〜3ヶ月後に血腫が生じてくるものであり、やがて痴ほうになる可能性もあり、高齢者の頭部外傷は軽微であっても注意を要する。