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スポーツ医科学(ドーピング)

牧野 和彦(岐阜医療技術短大)
 ドーピングというと陸上100メートルのベン・ジョンソン(カナダ)の名前が思い出されるほど、世界中に強い衝撃を与えましたが、日本のスポーツ界には「日本選手は大丈夫」という根強い思いがあります。
 しかし、スポーツ選手の海外遠征、国際交流の増加に伴い、日本選手のドーピング問題も対岸の火ではなくなっています。
 最近はスポーツの世界にも商業主義の波が押し寄せ、いわゆるアマチュア主義の原則がくずれてきました。世界が注目するオリンピックで金メダルを取れば国民的英雄になり、名声とともに物質的・金銭的利益を受けることができるようになりました。その結果、どんな手段を使ってでも勝利を得たいという強い思いにかられる選手、さらにはコーチや指導者があらわれてもおかしくないような状況が生まれてきています。ドーピングは発見されれば失格を意味しますが、筋力を増し、耐久力を強めスポーツ競技において選手を有利にすることがあります。勝敗はわずかな体力の差によって決まることも多く、適当な時期に薬剤やホルモンを使い検査をごまかそうとする選手と検査方法の改良のいたちごっこが繰り広げられています。
 一説によれば過去のオリンピックにおいてかなりの数の選手がドーピングに関与していたらしいといわれています。あるドイツ人記者は「ドーピングなければ成果なし。ドーピングあれば、倫理なし」と記しています。
 ドーピングとはスポーツでの勝利と成功のために薬を使っていわゆる不正をすることで、明らかにルール違反です。しかし、ドーピング検査は不正行為を行った選手を摘発するためだけに行われるのではありません。ドーピングは選手の健康を害する危険があり、選手自身の健康を守るために行われるのです。
 今後は大きな国際大会だけでなく、国内におけるいろいろな競技会や国体においてもドーピング検査が行われるようになります。いつ検査の対象になってもいいように準備しておく必要があります。
 日本選手のドーピング事例として自分は違反する意志がないのに、漢方薬、かぜ薬、ドリンク剤や栄養補助食品の中に入っていて知らずに飲んでしまったということがありました。日ごろから使用する薬の正しい知識を得ておくことが重要です。