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スポーツ医科学(グリコーゲンローディングの考え方(前編))

渡辺 郁雄(朝日大学内科)
 自転車競技選手が運動を行うとき、15分ごとに炭水化物(糖質)を含んだ飲料水を与えた場合と、単なる水を与えた場合とを比較すると、前者の方が時間が経過しても長くパワーが保たれたという実験結果から、運動中に炭水化物を定期的に補給するとパフォーマンスが維持向上できることが示されました。
 持久的運動能力には炭水化物の摂取が極めて重要であることは1930年代からすでにわかっていました。運動中の基本的エネルギーは炭水化物であり、その炭水化物は主として筋肉、肝臓内にグリコーゲンという形で貯蔵されています。しかし、その貯蔵量には限界があるので運動を続けるとグリコーゲンは次第に枯渇し、エネルギー源として脂肪が用いられるようになります。事実、運動前後に筋肉内のグリコーゲン量を測定すると、長時間の運動によって筋肉内グリコーゲンの量が少なくなり、グリコーゲンが減少すると疲労を感じてその補給が必要になります。
 1960年代によると、炭水化物の多い食物を摂ることによって筋肉グリコーゲン貯蔵量が増加してより長く運動が続けられること、1970年代には運動後のグリコーゲンの回復は、通常の食事では48時間以上要するが、炭水化物が多い食事を摂ると早くなること、最近ではクエン酸を同時に取ると肝臓、筋肉内のグリコーゲンが早く回復することなどが明らかにされてきました。
 それでは具体的には炭水化物をどのように摂取すると筋肉内のグリコーゲンをより早く回復させることができるのでしょうか?
 グリコーゲンを回復させるためには血糖値を上げること、すなわち炭水化物を摂取することが必要です。運動を始める30〜40分前に炭水化物を摂取すると、やがてインスリンも分泌されるので、筋肉内への炭水化物の取り込みが早くなりすぎ、低血糖を引き起こす可能性があります。このことから、炭水化物は運動開始直前に摂取するのがちょうど良いとされています。ただし、量の多い食事は運動の種類にもよりますが、1.5時間〜2時間前に摂る方が良いことはいうまでもありません。
 また、運動終了後は直後、遅くとも2時間以内に炭水化物を摂取することによって、筋肉内のグリコーゲンがより早く、より多く回復するとされています。