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スポーツ医科学(スポーツ選手とドーピング)

牧野 和彦(岐阜医療技術短大)
 ドーピングとは、スポーツ選手が競技成績を高めようとして、薬物などを用いることをいいます。これは明らかにルール違反ですが、なぜドーピングが行われるのでしょうか。
 10年以上前にアメリカで行われた調査ですが、「オリンピックで金メダルが取れるならば、5年後に死ぬとわかっていても薬を使うか」という質問に対して、実に52%が「YES」と答えています。今では金メダルを取ることは名声だけでなく金銭的にもより大きな価値を持つようになり、そのような社会的背景もドーピングが後を立たないこととは無縁ではないように思われます。
 日本でも97年にアトランタ・オリンピック日本選手団を含むJOCのオリンピック強化選手やその指導者に対して行ったアンケート調査があります。「よくないが頼ろうとする気持ちもわかる」は選37.2%、指導者30.4%。「ドーピングしてもかまわない、見つからなければよい」は選手3.3%、「わからない」が選手12.9%もいるのは大変気になるデータです。(日本オリンピック委員会著「アンチ・ドーピングガイドブック」より)
 「ドーピングはなぜいけないのか」ということに対して、スポーツ選手は毅然とした態度をとることが重要です。まず第一に「ドーピングはフェアプレーの精神に反します」。多くの人から注目されるような人がルール違反をすれば社会的にも悪い影響を及ぼします。またそれ以上に「ドーピングは選手の健康を害する」ということを忘れてはいけません。
 ドーピングとしてよく問題になるのは筋肉増強剤(タンパク同化ホルモン)や興奮剤ですが、タンパク同化ホルモンには副作用として肝臓の障害や高血圧、男性ではこう丸萎縮、女性では月経がなくなったり、口ひげや声の男性化が起きます。
 デヒドロエピアンドロスロン(DHEA)や大リーガーのマグワイヤが使用して有名になったアンドロステンダイオンは栄養補助食品としてアメリカで販売されており、通信販売や個人輸入などにより手に入れる例も見られるようです。
 「スポーツとは一定のルールのもとにフェアに競い合うもの」という原点に立ち戻って、「自分は何のためにスポーツするのか」「ドーピングはなぜいけないのか」についてじっくり考えてみる必要があると思います。