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スポーツ医科学(スポーツ選手と海外遠征)

喜久生 明男(きくいけ整形外科)
 競技力向上には自分のホーム以外での違った地域での適応も大切な要素です。日本ではいいが、海外では実力を発揮できない一流選手も多くいます。著者は日本ホッケー協会のチームドクターとして、男女の日本代表選手とともに海外遠征へ帯同した経験を持っていますので、海外で実力を発揮するには何が必要なのかまとめてみます。これには@フィジカル状態の維持Aメンタル状態の維持B環境適応(開催地での)と思っています。
 @で問題になるのは移動手段による体調の維持であり、長時間の飛行機、バス等でどう過ごすか。時差、気候(外気温、湿度)の変化による体調の適応をどうするかであります。Aでは言葉の問題とカルチャーショック(文化の違いのみならず、身の危険を意識する安全性を含めて)を最低限にすることです。Bでは水(飲料水)、空気、天候、細菌・ウイルス感染への対応です。
 フィジカル状態の維持では遠征が予定されれば、移動日や移動時間に合わせた練習を組んだり、この時間に身体を休ませるリズムを作る必要があります。1時間の時差に適応するためには1日の時間的余裕が必要となりますので、、6時間の時差のある国での大会では最低でも6日前には現地へ着いているか、日本で現地時間に合わせた練習をする必要があります。
 メンタル状態の維持には遠征先の言葉と文化、環境に関する情報をある程度勉強することが大切です。特に、海外での活動を目標とするのであれば、少なくても英語のカタコトでコミュニケーションが取れるくらいの語学力をつける努力も必要です。
 環境適応では特に水、空気、安全は何の問題もないと思っていた日本から離れますと、気をつけなければならないことが多く、競技に集中できなくなります。所が変われば、細菌・ウイルス感染も変わり、下痢や発熱に見舞われることがあります。食物も空気も口から入りますので、練習や試合などの外出後は必ずうがいと手洗いを欠かさず、生水は飲まず、必ず火を通してから飲むくらいの注意が必要です。また、胃腸をいたわるため暴飲暴食は厳に慎み、疲労を残さないよう体調に気を付けなければなりません。衛生概念に基づいた基本を身に付け、日ごろから実践していくとよいと思います。海外で競技する機会があれば、これらのことに留意して十分実力を発揮して下さい。