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スポーツ医科学(安全なスノーボードを目指して)

鷲見 靖彦(鷲見病院)
 スノーボード(以下ボード)のけがはどのような状況で起きるのでしょうか?また、そのけがを予防するにはどうしたらよいのでしょうか?
 ボードは一枚の板で両足を固定して滑るため、逆エッジ現象が起きたときには上体でしか防御姿勢がとれません。ほとんどの人は逆エッジ現象、あるいはそれに近い状態で受傷しています。
 フロントサイドの逆エッジでは両手をつき、手首を骨折します。バックサイドの逆エッジでもおしりをかばおうとして手をつくため、手首を骨折します。また、勢いが余るとそのまま後頭部を打って脳しんとうを起こしたり頭の中に出血したりします。スピードが出たまま転倒すると身体ごと雪面にたたき付けられ鎖骨骨折や肩関節脱きゅうをしたり、あるいは跳ね上がったボードで頭部を切ったりします。
 けがをした人の88%の人はボード回数が10回までの初級者で71%の人は2シーズン目までに受傷していました。
 言い換えればボードを始めて10回以内、2シーズン以内が危険であり、その間を慎重に滑れば7割〜8割のけがが防げると言えるでしょう。
 不思議なことにそのけがをした初級者の41%の人は本人自身は中級者だと思っています。確かにボードは最初は扱い難いものですがいったんボードの上で立てるようになると加速度的に上達するため、中級者になったと錯覚してしまうのです。それは自転車に初めて乗る感覚と同じです。ボードの上で立てるようになったからといって、逆エッジがコントロールできるようになったとはいえません。
 逆エッジが充分にコントロールできるまではソフトな雪質で充分練習して下さい。
 最近のボードのけがの特徴として、レベルアップしてきた中級者の衝突事故や無謀なジャンプで背骨を折ったり、頭の中の出血や内臓破裂などの大けがが増えています。
 正しい知識と正確なテクニックを備えての滑走やジャンプをして下さい。また、ヘルメットやプロテクターの準備も忘れないで下さい。