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スポーツ医科学(スポーツ障害からの復帰)

喜久生 明男(きくいけ整形外科)
 日ごろ鍛えた技と体と心(戦術も含めた)を競い合う全国高校総体は全日程を終了。選ばれた選手諸君は思う存分、自分の力を発揮したことと思います。今回はスポーツ障害で困った選手のために復帰に必要な事についてお話します。
 障害後の復帰で1番問題となるのは、障害前の状態に戻っていないのにスポーツ復帰し、いつまでも自分の力が出せなくなっている事です。ケガをした部位は十分に治っているのに、ケガをする前の筋力が戻っていない事を忘れているのです。そのために練習や試合では途中でリタイヤしてしまいます。故障が起これば、治療するための時間は必ず必要です。障害に落胆して悩むよりも、1日も早く復帰するために、まず、健康な部位の運動能力、筋力を維持するだけでなく、むしろ、強化するつもりになってトレーニングする事です。
 そして、障害の部位を1日でも早く動かしたり、体重を負荷できるような治療方法を工夫することです。たとえギプスを巻いてもギプスのままでできるトレーニングはあるはずです。わずかの期間のギプス固定の後、自分の筋力が予想以上に落ちていることを経験した人は多いはずです。障害部位の早期トレーニングにより、早期の筋力回復を考えることが何より大切なのです。
 障害によっては完全休養を要する事もありますが、こんな時にはドクターからしっかり説明を受け、指導を守り、トレーニング開始時期について正しく理解をして対処してください。
 スポーツ復帰に向けて大切なのは個々の筋肉の筋力を落とさない事だけではなく、全身の心肺機能を落とさない事も大切です。筋力ばかりを強調しましたが、筋力には筋出力、筋収縮スピード、筋持久力などがありますので、これらを考えたトレーニングは専門家の指導に従う事が大切です。また、障害部位が関節に時には、関節の動きの回復も重要なことは言うまでもありません。
 また、名選手は常に自分に必要なシーンをイメージとしてトレーニングしているといわれています。練習を休まざるを得ないときには自分に必要な動きをチームメイトや相手の動きを見ることによって養うビッグチャンスであることを忘れないで下さい。休んだことをプラスにできるわけですから。