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スポーツ医科学(起立性調整障害)

田内宣生(大垣市民病院)

 小学校高学年から高校生にかけて、この間まで元気に運動していたのにこの頃「朝なかなか起きてこない、朝食が食べられない」「学校へ行きたくない、行っても授業に身が入らない、いつも保健室で休んでいる」「集中力がなくなり成績が下がった」などというこどもたちを時々見受けます。「ずる休み?」「虚弱体質?」「登校拒否?」とご家族は心配になります。受験の時期と重なると一層深刻です。よくお話を伺ってみると「午後からは元気になる」「初夏から秋口までは調子悪かったけれど涼しくなったらよくなった」という人が結構あり、起立性調整障害という病気のことがあります。ODともいい、思春期前後に多発する自律神経失調症の一つで,起立時に血液が静脈を通って充分に心臓に帰ってこないことが主な原因だろうといわれています。男子より女子にやや多く、春から秋に悪化しますが、暖房事情がよくなった昨今は冬場にも症状に悩んでいる人が少なくありません。
 朝起きられない、午前中調子が悪いことのほか、立ちくらみ、めまい、ひどいときには気を失う人もあります。立っていると気分が悪くなって倒れる、入浴中に気持ちが悪くなる、動悸や息切れがあるなどという人もあります。そのほか顔色が悪い、食欲不振がある、胸痛や腰痛がある、体がだるい、疲れやすい、頭痛がある、乗り物に酔いやすいなどと訴える人もあります。こんな症状がいくつかそろったら起立性調整障害の可能性があります。小児科には起立性調整障害のチェックリストがあり、起立試験という簡単な検査を受けると診断がつきます。小児循環器外来に胸痛を主訴に来院される患者さんの中に起立性調整障害の患者さんが意外に多いのに驚きます。
 貧血やごくまれにはてんかんや脳腫瘍でも似た症状がでることがあり注意がいります。そのほか慢性副鼻腔炎、肺結核などの慢性感染症や心の悩みなどと区別が必要となります。 治療には漢方薬や昇圧剤などがよく効くことがあります。貧血は症状を悪化しますので貧血にならないような食生活に心がけることが大切です。静脈の環流を改善する意味で、下半身の筋力トレーニングが有効なことがあります。
 起立性調整障害は思春期前後に、運動部員にもみられる比較的多い病気ですが、ちょっと気付きにくい病気です。