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スポーツ医科学(運動と心拍数)

宮本洋通(朝日大学)

 心臓は袋のようなもので血液をため、収縮して血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。この1回の動きを心拍といい、それを血管では脈として感じるのです。脈に不整があったり、血圧の低いときは別として心拍と脈拍は一致しています。
 安静時の心拍数は1分間に60から100です。加齢とともに安静時心拍数は減少することもありますが、50くらいまでです。有酸素運動を習慣としている人、特に長距離走のトレーニングを行っている人では、安静時の脈拍数は少なくなります。一流のマラソン走者では安静時の脈拍数は30から40のことがあります。
 また、精神的緊張で心拍数は増加するので,健康診断や医師の診察時に心拍数が100を超えることも珍しくありません。これらの理由がないのに安静時脈拍数がいつも50以下か100以上の場合は一度検査を受ける必要があります。
 運動時には体が必要とする酸素が増加し、それを供給するために血液を全身の組織に送るために、心拍数は増加します。運動強度が増加するに従い心拍数も上昇します。しかし、あるところで心拍数はそれ以上増加しなくなります。これを最高心拍数といいます。最高心拍数は加齢とともに減少します。個人差はありますが、その人の最高心拍数は1分間当たりおよそ(220−年齢)とされています。
 運動能力にかかわらず同年齢であれば最高心拍数はほぼ同じです。運動能力の高い人はより少ない心拍数で同じ運動が行えるのです。いいかえると同じ心拍数では運動能力の高い人のほうが強い強度の運動ができるのです。
 心拍数と酸素摂取量との間に直線関係が成立しているので、心拍数(脈拍数)を測定することにより運動強度を知ることが運動指導の現場で行われています。最高心拍数と安静時心拍数の差に求めたい相対運動強度比(たとえば最大酸素摂取量の60%なら0.6)を乗じて、安静時心拍数を加えたものが最大酸素摂取量の60%に相当する運動を行ったときの心拍数ということになります。
  高血圧、狭心症の薬剤で心拍数を減少させるものがかなり使用されています。治療のためこのような薬剤を服用している人は安静時も運動時も心拍数は減少していますので、この方法は使用できません。