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スポーツ医科学(成長期の疲労骨折〜10代に多い脛骨骨折〜)

臼井 正明(大垣中央病院整形外科)

  正常な強度を有する骨に、日常生活で受ける外力を越えるような非生理的外力が加わったことによる骨折を疲労骨折と呼びます。
 多くの疲労骨折の共通点は、身体的活動が新しいか、あるいは異なっていること、その活動に労力を要し、最終的に疼痛が出現するような頻度でその活動が繰り返されることです。
 一般的には、疲労骨折は16〜30歳に最も発生しやすく、男性に多く、各種のスポーツ活動により発生し、好発部位はスポーツの種目によって特徴があります。ランニングを主体とする種目では、脛骨(スネの骨)のひざに近い部位、ジャンプを主体とする種目では、脛骨の中央部が好発部位です。うさぎ跳びをやりすぎると、腓骨(脛骨の外側にある細い骨)の疲労骨折が起こりやすく、足の甲が痛くなる甲足骨の疲労骨折は、行軍によって発生することから行軍骨折とも呼ばれます。
 関東労災病院スポーツ整形外科の報告によると、疲労骨折の年齢分布は16歳が最も多く、次いで15歳、17歳が多い。これは、中学生が高校生になる年代で、運動強度が急に上がるためと考えられます。スポーツ種目別での比較では、成長期では短距離走が最も多く、中長距離走は成人ほど多くありません。部位別頻度では脛骨が最も多く、その骨折部位は15歳以下では、脛骨上の3分の1に多い。この理由として、10代前半は脛骨上3分の1が全周にわたり骨皮質が最も薄く、受傷しやすいと考えられます。
 一日も早く治すためには、疲労骨折と診断されれば直ちにスポーツ活動の禁止(6〜8週間)が必要です。ただし、休止期間中は、骨折部以外のトレーニングや、骨折部に荷重のかからない水泳、自転車こぎなどはさしつかえありません。衝撃吸収能力のすぐれたインナーソール(靴の底敷き)の装着も効果的な例もあり、靴そのものの選択にも注意が必要です。運動再開時には、いきなりランニングをしたりせずに、通常の2〜3倍の時間をかけて、入念にウオーミングアップしてから、練習することが大切です。ランニングの際には、アスファルトのような硬い路面を避けて、芝生とか柔らかい土のグラウンドを選んで走り始めて下さい。安静時にも、活動時にも痛みがなく、局所の圧痛もなくなってからスポーツを再開して下さい。