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スポーツ医科学(中高年者のマラソン)

若原 和男(若原整形外科)
 岐阜県の平均の寿命は、男性78.28歳、女性は80.08歳となり、全国に比較しても上回っており、誰もが長寿で健康でありたいと願っています。
 「健康日本21」では国民一人一人が日頃より健康づくりを実施し、健康で寝たきりにならないため、活力に満ちた社会を目指しています。その目標の中に、身体活動、運動が挙げられています。日常の運動習慣は身体にいろいろ積極的効果をもたらすといわれています。
 最近、運動をする中高年者が多くみられるようになり、いびがわマラソンにおけるエントリー者数の推移をみると、第1回の1988年では総エントリー者数3391人の内、40歳以上の中高年者は1181人で34.8%、その内60歳以上の高年者は55人で、1.6%であったが、第14回の2001年では総エントリー者数6089人の内、中高年者は3102人50.9%、その内高年者は306人5.0%となり、中高年者は1.4倍、高年者は3.1倍と高年者の伸び率が高くなっています。
 中高年者がスポーツ、特にマラソンを行う場合、医科学的問題を当然、考えておかねばなりません。中高年者がスポーツを行う際の問題は大きく二つに分れ、第1は内科的な問題、主として動脈硬化を基盤とした循環系の問題であり、第2は膝痛、腰痛などの運動器の変形性変化の問題であります。
 中高年者のランニング中、最も重大なものは心臓死であります。中高年者は動脈硬化や高血圧を基盤にした冠動脈不全による虚血性心疾患が多くなり、中高年者がスポーツをする際には健康のチェックが必要であります。またその時のコンディションに応じてランニングの量や時間の調整をしなければなりません。年齢が高いランナーは健康診断を受けて、自分の健康状態を点検している者の割合が高い傾向にあります。しかし、競技志向のランナーは健康を過信する可能性があり、注意が必要であります。
 運動器の加齢変化として四肢の関節軟骨の変性により、変形関節症という状態になり、また脊椎では椎間板などの変性により変形性脊椎症という状態になります。
 これらの変形性疾患がランニングによって発生頻度が増すわけではありませんが、変形性疾患を保有する者がランニングの際に症状が憎悪する危険性があります。