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スポーツ医科学(これからのメディカルチェック)

渡辺 郁雄(朝日大学内科)

 メディカルチェック(MC)という言葉は明らかに英語であるのに、実際には英語圏ではあまり使われていないようです。この言葉が和製英語であるかどうかは分りませんが、わが国ではメディカルチェックを"スポーツマンのための健康診断"というような意味で用いています。実際にはスポーツマンあるいはこれからスポーツを行おうとしている人に対し、競技力向上を妨げている医学的異常はないか、スポーツを行うことによって悪化したり場合によっては急死する可能性がある疾病が隠されていないか、などを臨床医学的な立場から検証します。
 前者には鉄欠乏性貧血のような内科的なものや、筋肉のタイトネス(硬くなり柔軟性を欠いた状態)、アライメント異常(O脚、X脚など)、あるいはテニスひじ、野球肩(多くは使いすぎや不適切なフォームによる)のような整形外科的なことまでがあり、後者にはそれまで気付かなかった潜在的な心臓病、腎臓病、肝臓疾患などがあります。
 選手が自覚しない病気や異常が発見されると、治療のため一時的に、場合によっては生涯スポーツを行うことを禁じざるを得ない場合もあります。このためMCは選手の"あら探し"のように受け取られることがあり、選手や指導者から敬遠されることがあります。
 実際には気付かなかった貧血を治療することによって競技成績が顕著に向上した例、長距離陸上選手に数カ所の疲労骨折がみつかった例、マルファン症候群(先天的疾患で心臓、大血管に異常が起きる)が見つかったのに医師の忠告を聞かずに突然死を遂げた例、解離性大動脈瘤で命を落としかけた例などがあります。このようにMCはこれを確実に行うことによって競技選手が競技力を向上させ、潜在する異常や病気の悪化を防いだり、時には命拾いさえすることがあります。
 しかし、身体に与えられる負荷は競技種目によって強度も量も内容も異なります。すべての競技に画一的にMCを行うことは合理的ではありません。そこで私たちは数年前から競技種目別に必要に応じたMCを行うことを試みております。
 すなわち、長距離種目など持久力を要する競技や新体操のように体重増加を極度に恐れる競技では不十分な栄養接種も重なって潜在的な鉄欠乏性貧血、低たんぱく血症が問題になります。
 野球選手ではひじや肩のレントゲン写真が重要。ボクシング選手では頭のCTやMRIによって思いもかけない障害が発見されることがあります。ラグビー、レスリングでは頚椎などに障害が起こっていることがあります。