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スポーツ医科学(スポーツサプリメント

牧野 和彦 (岐阜医療短期大学)

 近年ドーピング・コントロールの規制強化とともに「エルゴジェニック・エイド」と呼ばれるスポーツサプリメント(栄養補助食品)が注目されるようになってきました。
 食事で十分摂取できない栄養素を補充するという目的ではなく、スポーツ競技のパフォーマンス向上を目的とするタイプのサプリメントをいいます。以下、代表的なものについて解説します。
1.分岐鎖アミノ酸(BCAA)=バリン、ロイシン、イソロイシン等の分岐鎖アミノ酸はトリプトファンの脳への急速な取り込みを抑え、中枢性疲労を防ぐといわれていますが、その評価は一定していません。
2.クレアチン=ATC-CP系に依存する特定の運動、特に反復性で短時間の回復期がある高強度運動に対して有効と言われています。
3.ベータ-ヒロドキシ-ベータ-メチルプチレート(HMB)=ロイシン代謝の副産物で、筋量を増やし、体脂肪を減らすといわれていますが、その機序ははっきりしていません。
4.炭酸水素ナトリウム=アルカリの貯蔵量を増やすことにより、筋細胞からの水素イオンの除去を容易にし、筋細胞の酸性度を低下させ、疲労を始まりを遅延させるといわれています。
5.L-カルニチン=長鎖脂肪酸のミトコンドリア内への輸送を促進し、長時間の有酸素性持久運動の後半における筋グリコーゲンを節約するといわれていますが、評価は一定していません。
6.アルギニンおよびリジン=アルギニンやリジンは必須アミノ酸で成長ホルモンやインスリンの分泌を刺激し、筋肉量を増加させるといわれていますが、評価は一定していません。
7.アスパラギン酸=遊離脂肪酸の利用を高め、筋グリコーゲンの利用を節約します。さらに血中アンモニアの蓄積を減少させるといわれていますが、評価は一定していません。
 およそ生体に影響を及ぼす物質はすべて過剰摂取すれば毒となる可能性があり、IOCのドーピング規定の「人工的かつ不正にスポーツ・パフォーマンスを向上させる目的で、ある物質を異常な量摂取する」に抵触する可能性が指摘されています。
 こうした新しいサプリメントを安易に使用しない態度も重要と思われます。