トップ > 競技スポーツの振興 > スポーツ医科学 > オーバートレーニング症候群

スポーツ医科学(オーバートレーニング症候群)

牧野 和彦 (岐阜医療技術短期大学)

 オーバートレーニング症候群とは、一般的には運動(スポーツ)の実施により生じた生理的な疲労(一種の防衛反応)が、十分に回復の過程をとられることなく、積み重ねられた結果として起こってきた慢性疲労(いわゆる過労)の状態と考えられています。
 オーバートレーニング症候群の症候はいろいろあり、初期には原因不明の競技成績の低下を訴えてくることがあります。 さらに進んだ状態になると、易疲労感、全身倦怠感、睡眠障害、食欲不振、体重減少および集中力の欠如などを訴えるようになってきます。 最悪の場合には、うつ病に類似した精神異常を示すようになります。
 貧血や感染症などの疾病が除外され、安静時心拍数の増加、安静時血圧の上昇、運動後の安静時血圧への回復遅延などがあり、競技力の低下あるいは最大パワーの減少があればオーバートレーニング症候群と診断されます。
 原因としては、過剰な肉体的あるいは精神的ストレスにより、視床下部−下垂体系の機能不全をきたし、脳下垂体から分泌されるホルモンの一部にアンバランスが生じてくるためと考えられています。 報告によると、疲労症状との関連性を強く認めるのは起床時の心拍数といわれており、疲労症状との関連性を強く認めるのは疲労症状の高まりと平行して起床時の心拍数が増加するといわれています(10拍1分以上の増加)。
 この起床時心拍数の急激な増加は"内因性心筋疲労"を反映しており、オーバートレーニング症候群の早期発見の有用な指標と考えられています。
 オーバートレーニング症候群の予防には、トレーニングを含めた日常生活での変化(早朝起床時心拍数、運動トレーニングに対する心拍数反応、体重変動、食欲低下、疲労感、以前は楽にこなせた練習がきついなどの自覚症状)に関して、注意深くチェックしていくことが重要です。
 また、POMS検査、DIPCA3検査、TSMI検査のような心理テストが非常に有効と考えられています。オーバートレーニング症候群は、重症になればなるほどトレーニングを中止させる期間を長くしなければならず、競技復帰までに長時間を要することになります。 日頃から早期発見に努め、休養を含めて選手各個人に見合ったトレーニング内容を作成することが重要です。