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スポーツ医科学(スポーツと腰痛)

佐々木 晃(太田病院整形外科)
 腰痛はスポーツ障害の中で最もよく見られるものの一つです。競技力向上に向けてこの障害を取り除くこと,予防することが大切です。背骨は前方に骨(椎体)と軟骨(椎間板)の支柱があり、後方に椎弓と棘突起そして脊柱を支える背筋といわれる筋肉、後方の横に間接(椎間間接)があり、これらの間には脊柱管という神経(脊髄や神経根)を入れる筒があります。腰痛の原因は部位によって異なり、前方では骨と軟骨、後方では間接や筋肉、中間では神経などが主な原因となります。
 現実のスポーツ障害では腰痛症が一番多く、次いで腰椎分離症ですが、腰椎椎間関節症そして椎間板ヘルニアによる神経痛などもあります。腰痛症は腰を支える筋肉の疲労ですので、この筋肉の疲れをとること(背筋のストレッチング)とこの筋肉を疲れない筋肉に鍛え直すこと(背筋の強化だけでなく腹筋の強化による良い姿勢の維持も大切)が治療と予防になります。
 腰椎分離症は腰の反りとねじれの力が繰り返しかかり過ぎることによる関節部位での疲労骨折であり、腰の反りとねじれ時の痛みが特徴です。中学生までに分離症が発生し、発見が早いときには運動中止とコルセットで治ってしまうことがありますが、分離症となって時間がたっていたり、高校生以降で発生したときには治ることがまれとなります。レントゲン写真では骨の亀裂がわかります。通常では反る動作に気を付けること、腹筋と背筋の強化で治療します。
 腰椎椎間関節症は分離症と同様に反りとねじれ時の腰痛ですが、太ももの外側やおしりのしびれ(これを関連痛と言います)を感じることが多いようです。
 椎間板ヘルニアによる神経痛(主に坐骨神経)では腰痛以外に脚(下肢)へ走る痛みや下肢を挙げられない(ラセグー徴候と言います)、けん反射が弱い、足指の力が弱いなどの神経症状を伴います。現在ではMRI(核磁気共鳴撮像法)にて椎間板ヘルニアがはっきりわかるようになりました。約90%の人は安静、薬、リハビリーテーションにて軽快します。
 腰痛の治療に共通することは背骨を支える腹筋と背筋の強化の柔軟性の維持、そして不良姿勢をとらないように気を付けることです。このことは治療のみならず予防にもつながります。全てのスポーツに共通する大切な骨格の中心である腰を鍛えておくことはとても大切なことを再認識してください。