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スポーツ医科学(ひじの痛み)

中根 康雄(中根整形外科)
 

肘関節は肩関節と手の間にあって、蝶番い運動(屈伸運動)と回外・回内運動(手のひらを上にしたり、下にしたりする)をすることで、手指の微妙な動きを可能にします。スペースシャトルのロボットアームが一本の棒ではなくて、途中にひじに相当する関節部分があることでいろいろな作業が可能になったのと同じです。
大人のひじ関節は比較的、単純な構造になっていますが、幼児や小児では、骨の部分よりも軟骨が大半を占めているため、転倒による骨折や繰り返す負荷による障害を受けやすく、その診断にも難しさがあり、成長とともに変形を残しやすいことを指導者は、認識すると同時に注意を払わなければなりません。
ひじのスポーツ外傷、障害頻度は、約4.2%で、そんなに頻度の高いものではありません。種目別では柔道が最も多くついで器械体操、バレーボールの順です。発生原因により、
1.自分の体を支えることにより起こるもの(柔道、体操など)
2.投げる動作により起こるもの(野球、やり投げなど)
3.ラケットなどを握ることにより起こるもの(テニス、ゴルフなど)
に分けられます。
1.支えることにより起こる外傷では、ねんざ、じん帯損傷、だっきゅう、骨折などがみられます。小児では必ず、レントゲンを撮って骨折の有無を確かめないと、あとで変形を起こす危険があります。
2.投げることにより起こる障害では年齢相応の練習方法や強度であれば、障害は起こりません。投球などの同じ動作の繰り返しにより起こる場合は練習内容、強度、指導に誤りがないか原因を把握することが大切です。障害部分は筋肉、じん帯、骨関節の順に起こってきます。筋肉の疲労によるものなら投球回数を減らすことで対処できます。じん帯に痛みのあるときは1週間、投球を休み(ひじ以外は十分に運動を行ってください)、痛みが消失したら、ストレッチングを行い、関節の動きが正常なら、筋肉トレーニングを始めます。2〜3週間後に投球を開始し、痛みがなければ、1〜2ヶ月後は全力投球を行うように練習してください。骨や関節まで及んでいたら、スポーツ再開まで倍はかかるでしょう。死んだ骨や軟骨があれば、取り除く手術が必要です。障害が骨に及ぶ前に、選手の異常を把握することが、最も大切なことです。
3.握ることによる障害では「テニスひじ」と呼ばれるもので、ひじの外側の骨の高まりに痛みを生じます。運動量は多くないか、フォームはいいか、ガットは強すぎないか、ラケットのスイートスポットに正しく当たっているかなどをチェックしてください。


練習前後のひじのストレッチングを忘れずに行うこと、痛みの強いときにはアイシングも必要です。