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スポーツ医科学(最大酸素摂取量)

渡辺 郁雄(朝日大内科)
<運動時の酸素輸送>
 運動は筋肉の収縮によって行われます。筋肉が収縮するためには酸素が必要です。酸素を筋肉まで輸送するのはもちろん血液です。呼吸によって肺へ入った酸素は血液の中へ取り込まれ、血色素と結合し心臓の駆動力によって全身へ運ばれます。
 運動が激しければ激しいほど単位時間内に大量の酸素が筋肉まで送り届けられなければなりません。したがって、どれくらい激しい運動を続けて行えるかということは、どれくらい心臓が血液を送り出すことができるかにかかっています。

<酸素摂取量の測定>
 現在のところ、正確に酸素摂取量を測定できる機械は相当大きく価格もはります。この機械に管またはコードを接続したマスクを着用し、呼気(吐く息)を分析してほとんどがリアルタイムに酸素摂取量を記録することができます。自転車エルゴメーターを利用して脈拍数のみから算出する酸素摂取量は誤差が大きいのであくまで参考値とすべきです。
 マスクを着用し運動強度を次第に挙げていくとこれ以上、酸素摂取量が増加しない点に到達します。この時の酸素摂取量を最大酸素摂取量といい、持久的運動能力の基本的な指標とされています。
 最大酸素摂取量は持久的トレーニングによって上昇し、一流長距離走者では60ミリリットル/分/キログラム(酸素摂取量が体重1キログラムにつき、1分あたり60ミリリットルという意味)までになることは希なことではありません。

<最大酸素摂取量測定の意義>
 優れた持久的競技選手は必ず高い最大酸素摂取量を示します。すなわち、酸素の輸送能力において優れているということです。
 最大酸素摂取量を上昇させるためにはインターバル走法はじめ代表的なトレーニング方法がいくつか提唱されており、ジョギングのような軽い運動のみでは最大酸素摂取量の増加は期待できません。
 長距離走者などにおいては自分に適した練習法を知り、定期的な最大酸素摂取量の測定を行って効果を確認しながらトレーニングを行うべきです。
 また、最大酸素摂取量と体脂肪率とは反比例します。持久的競技選手にとって余分な脂肪(すなわち肥満)は、コートを着用して走っているのと同じ事になりますから減量(脂肪を落とす)する必要があります。