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スポーツ医科学(スポーツと水分補給)

牧野 和彦(岐阜医療技術短大)
 運動中に水分をとることは、ひとむかし前まで一般にタブーと考えられていましたが、最近では多量の発汗を伴うスポーツでは水分の補給が不可欠と考えられるようになりました。
 人は体重の60%以上が水分で占められています。暑い日にスポーツをする場合、適切な水分補給が行われないと脱水症状におちいり、時には生命にかかわることがあります。このような状態を総称して熱中症といい、熱けいれん、熱疲労、熱射病の三つに分けられます。
 たくさんの汗をかいたとき、水だけを補給していると体内の塩分が不足し、筋肉の激しい痛みやけいれんが起こります。このような状態を熱けいれんといい、血液中の電解質のバランスが崩れています。暑い夏に激しい運動をして多量の汗をかいたときには水と一緒に塩分を補うことが重要です。熱疲労は体内にこもった熱を発散させるために皮膚の血管が膨張し、循環不全を起こした状態をいいます。全身の脱力感、めまい、悪心、おう吐などの症状がおき、ときには血圧が低下して意識を失うことがあります。涼しい場所に運び、頭を低くし、足を高くして寝かせます。水分の補給をしますが、意識がはっきりしない場合には、点滴などの治療を受ける必要があります。
 熱射病は熱中症の中でも最も重症で、体温は40度を超え、意識障害をおこして死亡することもあります。周囲の温度があまり高くなり過ぎると、熱の発散が障害され、体温が上昇します。はじめは頭痛、めまいなどの症状がみられ、次第にけいれんを起こしたりします。また、ひどくなるとこん睡状態におちいります。まず、体温を下げることが重要で、高体温、意識障害の持続時間によって予後が左右されます。体を冷やしながら速やかに病院へ運ぶ必要があります。体を冷やす方法としては、冷たいタオルをあて、涼しい風を送ったり、首、腋下、脚のつけ根などを冷やしたりするといいでしょう。
 熱中症を予防するためには水分の補給を十分に行う必要があります。のどが渇いたと感じるまで待っていてはいけません。気温の高い日には、運動の15〜30分前に500ミリリットル、以後10分ごとに150〜200ミリリットルの水分補給が進められています。これ以上の摂取は胃に停滞して不快感をもたらします。糖分の多いジュースや清涼飲料水は吸収されるのに時間がかかり、胃に負担となりますので、冷たいスポーツドリンクが最適と思われます。