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スポーツ医科学(科学的トレーニング)

川口 純子(スポーツ科学トレーニングセンター)
 競技スポーツの選手は、パフォーマンスを高めるためにほとんど毎日のように何かのトレーニングをしていますが、その内容は、技術練習が中心です。体力トレーニングは、補強トレーニングとかサーキットトレーニング、基礎トレーニングなどと呼ばれています。選手や指導者の中には、パフォーマンスを高めるために体力トレーニングが本当に必要かどうか疑問を抱えていることも多いようです。なぜなら体力トレーニングを行っても思ったほどの効果がないと感じているからです。
 近年、スポーツ科学の発達でトレーニング効果を出すための条件が少しづつ明らかとなってきました。それは、次のような内容です。
1.頻度・・体力トレーニングは、定期的に週に2回から3回以上は行う。
2.強度・・筋力トレーニングは、最大筋力の50%から80%程度を目安にスタミナのトレーニングは、最大酸     素摂取量または、最大心拍数の50%から80%程度で行う。
3.期間・・体力のレベルアップは3ヶ月くらいで期待できる。
4.時間・・スタミナをつけるには30分以上が必要、また1回のトレーニングは1時間以内で行う。
 体力トレーニングの効果を出すためには、これらのすべての条件を満たさなければなりません。ところが、実際のトレーニングの状況を観察してみると、トレーニングは雨の日にだけ行っていたり、トレーニングの負荷は選手まかせであったり、スタミナをつけたいのにトレーニングは短期間であったり、重い負荷を使った筋力トレーニングを朝練習で行ったりしています。これでは、十分な効果は期待できません。現場で前述の条件を満たそうとすると難しいのが現実ですが、いくつかの工夫をしてみましょう。
 例えば、筋力トレーニングでは、種目を上半身、下半身とに分けて、1日づつ交互に20分から30分ずつ行ってみるとか、筋肉をつけやすくするために練習後、できるだけ早いうちにたんぱく質を含む食品をとっておくなど、できることから始めましょう。また、体力を高めておくと肉離れや腰痛などスポーツ障害の予防にもなります。選手の中には、障害を起こしてからこつこつとトレーニングをはじめ、障害を負う前以上の体力になり、以前より活躍できるようになった例もあります。
 体力トレーニングの効果をパフォーマンスの向上につなげるためにも、トレーニング現場で小さな工夫から取り組むことが大切です。