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スポーツ医科学(成長期のスポーツ)

船橋 健司(多治見市民病院整形外科)
 「子どもは大人のミニチュアではない」という言葉は、医学の分野ではよく聞かれます。成長期にスポーツを行う時には、大人と同じトレーニングをするのではなく、子ども特有の体のしくみを理解することが重要です。
 子どもの骨は軟骨部分が多いために、そんなに大きくない外力でも繰り返すことによって正常な軟骨の発育過程が障害され、痛みや変形の原因になったりします。
 子どもの関節は柔軟性が大きいために、ねん挫をすることが少ないかわりに関節近くの成長軟骨を痛めることが多いのです。 一方、子どもの筋肉は骨に比べて発育が遅く、その上トレーニングをしても筋肉はあまり増加しません。急激に体が発育する時期にこれらの条件が重なると、ひじ、肩、ひざ、腰などを痛める結果となります。
 野球ひじ、野球肩、オスグット病、せき椎分離症などが成長期にみられる典型的なスポーツ障害です。これを放置したままで、練習を続ければ、永久に障害が残ってしまいます。有名なプロ野球選手のひじが完全に伸びないことや、金メダリストの体操選手がせきつい分離症のために現役を引退したことはよく知られています。
 それでは、どうしたらこのような障害を防ぐことができるでしょうか。大切なことは、正しい方法で練習することです。指導者がこのことをよく知らなければなりません。
 練習は多いほど上達するというものではありません。個人の体力に応じた運動量を決めること、少なくとも週に1日は体を休養させることは練習を効果的にします。また、練習には十分なウォーミングアップとクールダウンが重要です。そして、一つのスポーツばかりをすることなく、シーズンによっていろんな種目を練習に取り入れることは、バランスのよいからだを作ることになり競技力の向上につながります。
 不幸にして、どこかに痛みが出てしまったら、すぐに練習を中止するのではなく運動量を減らすことから始めます。スポーツ選手が急に運動をやめてしまうことは、トレーニング上よくありません。まず、練習量を2分の1にします。それでもよくならなければさらに2分の1に減らします。この間、ストレッチングを怠らないことが重要です。練習を休むと試合に出してもらえないとか、レギュラーから外されるという理由で痛みを内緒にすることが、一番危険なことを認識してください。