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スポーツ医科学(トレーニング後の糖質補給)

林 美穂子(松波総合病院)
 スポーツを行う上で重要な栄養素が糖質であることはよく知られています。糖質は単糖類、少糖類、多糖類の三つに分けられます。
 単糖類にはブトウ等(グルトース)、果糖(フルクトース)、ガラストースがあり、これ以上分解できない糖です。単糖類が数個結合したものが少糖類で蔗糖(いわゆる砂糖)がその代表です。さらに多数の単糖類が結合したものが多糖類で、でんぷん(植物性)とグリコーゲン(動物性)があります。
 人間は食事で摂った糖質を肝臓でブドウ糖に変え、グリコーゲンという高分子量の化合物として骨格筋や肝臓に貯蔵します。運動時にはこのグリコーゲンを分解し、エネルギー源にしています。従って、持続力すなわちスタミナとは、このグリコーゲンの蓄積量に関係があります。いわゆる「ばてる」のはこの筋グリコーゲンが枯渇して筋肉が動かなくなった状態をいいます。
 しかし、体内に貯蔵できる糖質量はわずかで、一般人で約300グラムと言われています。これは人間の生命維持の必要最低量に過ぎません。そのため貯蔵グリコーゲン量を高めるための糖質の摂取方法、タイミングについていろいろな研究がなされています。トレーニング後はグリコーゲンが枯渇していますので、身体は糖の吸収率を高め、より多くのグリコーゲンを蓄積できることが知られています。また運動後に糖類が十分に補給されないと大切な筋肉中のたんぱく質をも分解して糖類を作るようになります。糖質をうまく補い、筋肉を十分休息させることが、筋グリコーゲンの合成を促進し、疲労回復につながります。
 ただし激しいトレーニングの直後は交感神経系の働きが優位で、消化管の運動や消化液の分泌が抑制されていますから、胃腸に負担にならないような糖質補給が勧められます。またこの際、酸味のある食品(果物、野菜ジュース等)を一緒に摂ると食品に含まれるクエン酸がグリコーゲンの合成を促進します。
 運動後には糖質だけでなく、発汗により失われる水分や電解質の補給も大変重要ですが、最近のスポーツ飲料にはこれらも同時に含まれています。