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スポーツ医科学(中高年のスポーツ外傷と障害)

臼井 正明(大垣中央病院)
 近年の高齢化社会に伴い、中高年のスポーツブームはますます活発になっています。しかし、中高年スポーツは老化にもとづく骨、関節、筋肉、腱などの変化があるために軽微な外力による外傷や使い過ぎによる障害を比較的容易に発現しやすいことが特徴です。
 中高年によく見られるスポーツ外傷としては、アキレス腱断裂、腓腹筋断裂、足関節部のねん挫などです。スポーツ障害には、肩関節周囲炎(五十肩)、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、ろっ骨疲労骨折(ゴルフ骨折)、手関節部腱鞘炎、膝関節痛(変形性膝関節症)、腰痛などがあります。
 受傷年齢は50歳中ごろまでに多く発生し、受傷部位は若年層に比べて腰部の障害が少なく、下腿、肩関節及び胸部での障害が多くなる傾向があります。また、中高年者群では、男性に上肢の障害が多く、女性に下肢の障害が多い傾向があります。
 中高年スポーツ障害の共通要因として、
@ウォーミングアップ不足
A筋力の低下
B柔軟性の低下
C骨、関節、筋肉、腱の加齢的な変化
Dその他(肥満、アライメント不良など)
があります。
 中高年スポーツ障害の予防策としては、
@日ごろからの運動(ストレッチングと筋力強化)
Aスポーツ前の充分な準備運動
B用具(くつ、ラケットなど)に対する注意
Cコンディションづくりと体調の悪い時に無理をしない心掛け
D気候や時間帯に注意
E年齢、体力、実力に合った運動をする(オーバーにならないように)
F関節や脊椎の「かたさ」に応じた無理をかけないためのフォームの改良
などが必要です。
 中高年に適した運動とは、
@個人の健康、体力に合わせてできるもの。チームスポーツよりも個人スポーツの方がよい
A全身的な運動で、局所に強い負担のかからない運動がよい
B運動強度は強くなく、有酸素的な運動がよい
Cけがや自己の危険の少ない運動がよい
D基本的な運動として体操、速歩、ジョギング、水泳などがよい。
 いかに運動を続けていても、老化による体力低下は、程度の差こそあれ必ずやってきます。従って、「昔とったきねづか」という気持ちは危険で、体力の低下を自覚しながら、体力にあった運動を続けるよう心掛けて下さい。