競技スポーツの振興
スポーツ医科学(子供へのスポーツ指導)
加藤 義弘(岐阜大学) |
新学期を前に、何かスポーツを始めようと考えている子供たちや、新しい子供たちや、新しいチーム構想を練っているスポーツ指導者の方も多いと思います。 現在の子供をとりまくスポーツ少年団や学校でのクラブ活動などの組織化された集団での活動が多くなっています。それぞれの集団では子供たちは一つのチームの一員として指導されています。 成長期の子供に対するスポーツ指導は、個人個人の発育、発達に応じて行わなければなりません。このことを考慮に入れないトレーニングは効果も少ないばかりでなく、スポーツ障害の発生の危険も大きくなります。 成長期の子供たちの運動を考える場合、一般的には3つの時期に分けて考えられています。まず、神経系の発育が著しい11歳以下の時期には「基本的な運動動作の習得」を目標にトレーニングします。つまり、様々な運動や競技を体験させ「動きを作る」ことが大切です。また、この頃はスポーツとの出会いの時期でもあり、気軽に参加でき、楽しく運動できるような配慮が必要となります。 12歳から14歳は主に呼吸・循環器系の発育がさかんになります。この時期には「持久力をつけること」を目標にします。つまり有酸素運動を十分に行い、「ねばり強くなること」が大切です。この頃には専門種目が決定することが多く、それによりトレーニング内容も変化していきます。 15歳から18歳は骨格筋の発育が著しい時期です。これは性ホルモンによる作用が大きいのですが、男性ホルモンと女性ホルモンとでは作用が違うため、男女差がはっきりとでます。この時期には「力強くなること」を目標とし、筋力トレーニング等を行います。競技種目もより専門的となり、競技選手を目指す時期でもあります。 以上はあくまでも一般論であり、子供の発育には大きな個人差があることを念頭に置き、個人に適した指導を考えなければなりません。 そして最後に何よりも大切なことは、長く続けられる環境を整えてあげることです。そのためにはトレーニング内容だけでなく、子供の心を大切にし、子供たちが理解できる指導をし、楽しくスポーツをさせることが大切です。 |