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スポーツ医科学(グリコーゲンローディングの考え方(後編))

渡辺 郁雄(朝日大学内科)
 前回は運動開始直前と運動終了後短時間の間に炭水化物を摂取することの重要性について述べました。
 具体的にどのような物を摂取すればよいのでしょうか?摂取する炭水化物の性状としては、胃から早く小腸へ移動するものがよいとされています。水分なら炭水化物の濃度としては6〜10グラム/100ミリリットルがよいとされますが、多くのスポーツドリンクはこの範囲内にあります。濃度が濃すぎると胃からの移送に時間がかかります。また、量的に多すぎると胃が膨満して移送が遅れますから、100〜150ミリリットル/20分とし温度は低い方がよいとされています。固形物でも消化の悪い物やあまりかさばらないものが勧められます。パン、菓子パン、ごはん、おにぎり、パスタなどがよいでしょう。すなわち、練習や試合が終わったら空腹のままで帰宅するのではなく、自宅が遠方の選手は特にこれらを飲んだり、食べたりしてから帰宅することが必要です。
 筋肉内グリコーゲンを高いレベルにおいて試合に臨むことが一つの必勝作戦ですが、その方法として、グリコーゲンローディング(またはグリコローディング、カーボローディング)と呼ばれる方法があります。この考え方は、いったん筋肉内のグリコーゲンを追い出してからこれを十分補給すると、前よりも高いレベルまで筋肉内のグリコーゲンを増加させることができるという実験的理論に基づくものです。
 具体的には多くの選手がいろいろな方法を取り入れていますが、一例をあげると、試合の1週間前から3日間は炭水化物の摂取を極端に減らし、一方ではトレーニングのレベルを高めて疲労困ぱいに追い込みます。コーゲンは著しく減少し選手は高度に疲労します。その後3〜4日間、試合当日までは大量の炭水化物を摂取して同時に練習量を落とします。こうすることによって筋肉内のグリコーゲンは1週間前よりかなり高いレベルまで増加し、その状態で試合に臨むことができるというわけです。
 期間については長短様々な方法が提唱されていますし、はじめから上記の後半部分のみでよいとするやり方もあります。要は筋肉内のグリコーゲンをいったん追い出し、その後急速に炭水化物を多量に摂ることによって筋肉内のグリコーゲンを増加させようという考え方です。具体的な方法は指導者とよく相談しながら、自分に最も適したスケジュールを見付けることが大切です。