トップ > 競技スポーツの振興 > スポーツ医科学 > トレーニング効果の特異性

スポーツ医科学(トレーニング効果の特異性)

古田 善伯(岐阜大学教育学部)
 誰でもトレーニングを行うと、それに見合ったトレーニング効果が表れてきます。しかし、中には思うようなトレーニング効果が表れてこなかった経験を持っている人もいるのではないでしょうか。自分の期待する効果を得るためには、そのためのトレーニング条件(運動様式、運動強度、運動時間、運動頻度)が適当に設定されている必要があります。
 たとえば、体力トレーニングの場合、どの体力要因を強化したいのか、あるいはどこの部位を強化したいのかといった、トレーニングの目的を明確に具体化して、それに適したトレーニング条件を設定することが重要となります。
 一方、トレーニング条件を設定する際にはトレーニング効果の特異性を十分に考慮しておくことも重要です。この特異性というのは、たとえば、筋力トレーニングを行うと筋力は強化されますが、持久力は強化されません。反対に持久力トレーニングをすれば持久力は強化されますが、筋力の強化は望めません。このトレーニングの効果の特異性について「腕立て伏せ」という具体的な運動を例にして考えてみましょう。
 「腕立て伏せ」を筋力トレーニングの運動として行うとき、例えば、腕の屈伸回数が
@2回しかできない人
A10回程度できる人
B100回できる人
の3人がいるとします。この3人の場合、@の人にとっては負荷が強すぎて筋肉の増強を図るには回数(量)が少なすぎますが、全力で力を発揮するため集中力を高めるには有効です。Aの人にとっては、筋肉の肥大をもたらして筋力の強化に適した回数になります。Bの人にとっては、負荷が小さすぎて筋力の向上は望めませんが、筋の持久力が増してきます。
 つまり、Aの人には、「腕立て伏せ」は腕を伸ばす筋(上腕三頭筋)のトレーニングに適しているといえますが、他の@とBの人の場合は筋力トレーニングの負荷としては適当でないといえます。このように、運動様式が同じでも、繰り返す回数(運動強度)が異なるとトレーニング効果の表われ方も違ってきます。
 以上のように、自分が期待するトレーニング効果(トレーニングの目的)を得るためには、トレーニング効果の特異性を考慮してトレーニング条件を設定し、有効なトレーニング・プログラムを作成していくことが重要となります。