トップ > 競技スポーツの振興 > スポーツ医科学 > 月経期間中のスポーツ活動

スポーツ医科学(月経期間中のスポーツ活動)

三鴨 廣繁(岐阜大学)

女子のスポーツ活動が盛んになるにつれて月経中の運動が身体におよぼす影響についても注意が払われるようになってきましたが、月経中の運動に対しては種々の考え方があります。
月経中の子宮は重量を増し、出血状態にあるため過激な運動は避けた方が安全であり、衝撃の大きい運動や、著しく疲労をきたす運動、水泳などは避けるべきであるという考え方があります。
その一方で長期的に出産機能に悪影響をおよぼすという報告もないため、そんなに気にする必要はないとも言われています。
月経中のスポーツ活動については、日本産婦人科学会が1989年に「思春期少女の月経期間中のスポーツ活動に対する対応の指針」を出していますが、その中で最も重要なことは、本人の自由意志であるとしています。
そして、画一的に強制的にトレーニングを行わせることには問題があるが、自由意志を尊重しすぎて、ただ月経期間中であるという理由のみで絶対に行わないということにも問題があるとしています。特に、月経期間中の水泳については問題とされやすいのですが、医学的・衛生的にはタンポンなどを使用すれば問題は少なく、画一的に指導せず本人の自由意志を尊重すべきです。
スポーツにより「月経痛が悪化する」「激しいスポーツを行うと無月経になる」「月経周期、持続日数が不規則になる」場合は、月経中の練習時間や練習方法などスポーツの取り組み方に注意が必要と思われますので、専門医(産婦人科)を受診することが望まれます。現在のところ、スポーツによる月経異常で医師の診察を受けることはあまりないと思いますが、激しいスポーツ活動により月経異常を起こすことは、多くの研究で指摘されています。

 スポーツトレーニングに起因する月経異常の発現の要因として、スポーツトレーニングによる身体的・精神的ストレス、節食・ウエイトコントロールによる体重減少・体脂肪の減少、スポーツトレーニング時に起きる内分泌的環境の変化などが挙げられています。
スポーツ選手としての活動が盛んな思春期以降の女子選手においては、将来の出産というイベントを考慮した場合、月経中のスポーツ活動についても適切な指導を受けることが望まれます。