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スポーツ医科学(疲労の指標〜クレアチンキナーゼ)

牧野 和彦(岐阜医療技術短大)
 クレアチンキナーゼ(CK)は骨格筋や心筋に多く存在する酵素で、細胞の損傷、破壊および細胞膜の透過性亢進により血中へ出てきます(逸脱酵素)。
 CKには4つのタイプ(アイソザイム)が知られており、アイソザイムを調べることにより骨格筋由来か、心筋由来によるものかが分かります。
 血中CKは臨床的には骨格筋や心筋障害の指標として用いられています。心筋梗塞のときに上昇することは有名ですが、運動による骨格筋障害とは前述したCKのアイソザイムにより識別することができます。
 血中CKはマラソンのような長時間にわたる運動や強い筋収縮を伴う運動により著しい上昇を示しますが、その機序は異なるものと考えられます。
 マラソンのように全身の筋肉を動員するような運動よりも部分的に強い筋収縮を起こす運動の方がむしろ高値を示す傾向にあり、運動に動員された筋肉の量あるいは運動時間と、血中CKの上昇程度とは必ずしも一致しません。
 また運動によるCKの上昇は運動直後よりも翌日以降に顕著に現れ、通常1週間程度で元に戻りますがその消長には個人差が大きく、未鍛練者ほど上昇が著しくその回復にも時間を要すると言われています。
 日常的に激しいトレーニングを行っているスポーツ選手では、慢性的に血中CKが高値を示すことがありますが、休養により血中CKは低下します。
 連日のトレーニングにより疲労が蓄積してくると、血中CKは高値のまま持続するようになるため疲労の度合いを客観的に知る一つの指標としてとらえる試みがなされています。いわゆるオーバーユースの予防に利用できるかもしれません。
 週4日以上の持久運動や筋力トレーニングを行っている場合、血中CKの軽度上昇は生理的変化とみなしていいと考えられています。
 血中CKが常に1000IU/I以上を示す場合は、筋肉の損傷程度が大きいと考えられ、激しい筋肉痛や運動障害を伴う場合は休養が必要となります。コンタクトスポーツでは打撲による筋損傷の可能性もあるため外科的処置を必要とすることがあります。
 血中CKの異常高値が持続する場合は、横紋筋融解症も疑われますので専門医に相談して下さい。