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スポーツ医科学(アスレチックリハビリテーション)

鵜飼 建志(平成医療専門学院)
 アスレチックリハビリテーションの「アスレチック」とは運動競技・選手を意味する。「アスリート」の形容詞です。つまり、ケガで競技に支障をきたした選手が徐々にスポーツ復帰し、最終的に元の競技まで導くのが、アスレチックリハビリテーションです。
 では、具体的な例をあげて説明してみたいと思います。ある選手が試合中にひどく足首の捻挫をしてしまいました。病院でギプスを巻いてもらい、松葉杖で帰りました。3週間後、ギプスをはずしたときには足はやせ細り、ふくらはぎに力を入れても固くならずフニャフニャです。さあリハビリの開始です。気泡浴で足を温め、足首の運動により、動きは徐々に改善し、6週間目には痛みなく歩けるようになりました。これなら日常生活に復帰できるのでメディカルリハビリテーションとしてはゴールとなります。でも、このまま競技に戻ったらどうなるでしょう?スポーツは動きが複雑な上、身体各部に高負荷がかかります。この時点では、それに見合うだけの安定性や筋力がないので、間接に痛みや緩みが出現してしまいます。
 競技に戻るならアスレチックリハビリテーションが必要です。患部外トレーニングで、全身の体力維持・増強を図りながら、患部の筋力、動き、安定性を高め、ステップや方向転換など複雑なスポーツ動作に対応できるようにする必要があります。そこで、まずは歩行、ジョギング、ターンなどの基本動作訓練から開始します。何度も何度も反復し、正しい動作で行えるようになったら、テーピングなどで患部を保護しながら、段階を追って、複雑で速い動きへと進みます。練習へ合流でき、試合に出場できればゴールとなります。
 スポーツでケガをする原因は様々です。その原因の一つに「ケガをしやすい動き」があります。足首の捻挫で言えば、足先が内側に入りやすいとか、足の裏を床にべったり付けたままクロスオーバーステップを行う、などです。この動きのままでは、再びケガをするおそれがあります。これらの動きが起こる身体的原因を見つけ、機能改善を図るとともに、基本動作訓練で悪い動きを直していきます。
 このほかにもトレーニングの問題や、環境面の問題などもありますが、これらの原因を把握し、改善を図ることで選手の競技復帰と再受傷防止を目的に行うのがアスレチックリハビリテーションです。