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スポーツ医科学(適度な休養で(超回復))

渡辺 郁雄(朝日大学)
 競技選手に練習が必要なことは当然です。練習には大別して繰り返した威力の限界まで追い込むことによって極限の能力を高めるものと、一見同じ運動を反復することによって技術を向上させるものとがあります。もちろん両者を混合した練習も行われます。
 筋力や持久力増強を目指す練習は主として前者にあたり、人間の身体は強い負荷を与えれば増強するという運動の法則に基づいています。一方、巧緻性や反射性の向上を目指す練習は主として後者にあたります。これらの能力はたとえば毎日行えば向上し、1日あけると現状維持、2日あけると低下する、あるいは新しい技術を本当に身につけるには反復練習が必要であるという人間の運動神経の特性に基づくものです。
 もちろん、いずれの場合も練習の強さや量だけではなく、練習の段階、頻度、方法のほかに実施者の意識の持ち方など種々の条件が必要なことは当然です。
 練習を積めば積むほど競技力は向上するということは一面の真理ですが、人間には疲労という問題があります。すなわち、練習には必ず疲労が伴い、最終的にはその練習が行えなくなりますが、それ以前に能力的には逆に低下してしまう時期があり、この時期にむやみに行う練習は競技力を向上させないばかりか、障害を発生する誘因にもなります。
 そこで、休養ということが問題になります。休養をとる(または練習の間隔をあける)ことによって疲労が回復し、それとともにいったん低下した能力が次第に回復します。回復するだけではなく、やがて以前より能力が増加する時期がやってきます。この時期を超回復(スーパーコンペンセーション、オーバーコンペンセーション)期といって、この時に再び練習をすると以前より高い能力を獲得することができるとされています。超回復は練習量と適切な休養の関係を決める上で重要なポイントとなります。
 この考え方を実際に役立てるのはそれほど簡単ではありません。Weineckという人の研究によると現実には超回復期は練習の方法、段階、種類、身体の部位によって異なるばかりではなく個人差も大きく、指導者は種目、選手によって超回復が最大になるような練習メニューを作成することが重要な課題となります。