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スポーツ医科学(ゴルフスイングの落とし穴)

木田 公洋(長良整形外科病院)

 ゴルフは中高年向きの体にやさしいスポーツという感があります。しかし、そんなイメージとは裏腹に無理なスイングによる頚部、胸部、骨盤部などいわゆる体幹部の障害が多くみられます。
 ゴルフは左右非対称な動作の繰り返しでテークバックからフィニッシュまで、脊椎(背骨)や骨盤は、しなったり、ねじられて結果として約180度以上回って見えます。
 回転軸となる脊椎は、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個などにより成り立っています。それぞれの回転角度は頚椎が約50度、胸椎が約35度、腰椎は意外と思われるでしょうが約5度しか回転できません。腰部の障害は5度しか回転しない腰椎を主たる回転物と考え、股関節を固定させて無理に回そうと繰り返し努力した結果起こる事が多いのです。前述したように胸椎、腰椎合わせても40度しか回転できません。あとの50度は股関節が回転するのです。いわゆる腰を回すというのは骨盤を含めた体幹を回しているのです。
 股関節を回す場合、回転軸が2つあってはスムーズな回転ができず、腰部、骨盤部の筋肉群に無理な負担がかかります。体重移動を行い、回転軸となる股関節を一つにする事によりスムーズな回転が得られます。その結果、腰部、仙腸関節、恥骨結合部などの障害の予防につながります。
 打球動作の特徴として、ボールをしっかり見つめた動作であるため頚椎はほとんど回転しません。しかし、その直下の胸椎は強く早く繰り返し回転します。そのため第七頚椎と第一胸椎の間にストレス発生し、頚椎部痛や項部痛、ときには第七頚椎棘突起の疲労骨折をきたす事もあります。
 どこを回転軸とイメージしてスイングをするかが、大切な問題です。脊椎を回転軸だとイメージするとスムースな回転が得られます。それに対し、体幹の中心を回転軸だとイメージした場合、脊椎に働くいろいろな筋肉や半棘筋などが胸廓や腰背部に“ひずみ”を作るように作用し肋骨の疲労骨折や腰背部痛の原因となります。
 解決策としては準備体操、整理体操、ストレッチングなどはもちろん、体幹や下肢の基礎体力作りを打球練習と同じくらい重要視して下さい。また、脊椎や股関節の運動機能を十分理解した上で無理のないリズミカルでゆったりとしたスイングを身につける事が大切です。