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スポーツ医科学(スポーツと性格)

植木 啓文(岐阜大学)

 個人が性格特性を知ることは、競技能力を十分に発揮することにつながりますし、団体競技では、ポジションを選択する際にも役立ちます。性格には数多くの類型がありますが、今回は口語版精神分析といわれるエコグラムを基にして考えてみましょう。
 エコグラムには5つの自我状態があります。Pは親の自我状態、Aは大人の自我状態で、事実に基づいて合理的に判断する理性の部分、Cは子供の自我状態です。さらにPはCPとNPに、CはFCとACに分かれます。CPは父親のように枇判的な自我状態で、NPは母親のように養育的な自我状態です。FCは子供の明るく自由な自我状態で、ACは順応した「良い子」の自我状態です。これらの自我状態の総合によって、性格が規定されます。次に、競技と自我状態との関連を具体的に考えてみましょう。

 例えばサッカー競技中に決定的なゴールチャンスを逃した]選手の「ごめん。悪かった(FC)」という言葉に対し、チームメイトの次のような反応が予想できるでしょう。「せっかくのチャンスなのに、何てことをしてくれたんだ(CP)」、「だれにでもこんなことはあるよ(NP)」、「タイミングが合わなかったのか(A)」、「本当におしかった(FC)」、「僕も失敗しそうだな 。いやだな(AC)」。
 これらの反応の中で、1番しっくり感じられるのが自分に優位な自我状態です。さて、]選手に対して、どのように反応すると良い競技結果が得られ、チームワークが維持できるでしょうか。この場合、CPからの反応が最も望ましくない結果を招きそうです。そこで、CP優位の人は普段からCPを下げる努力をすることが必要です。具体的には例えば、「完全を求めず、相手の長所や考えを認める余裕を持つこと」 「仕事や生活を楽しむようにすること」などが必要です。このようにして、自分の自我状態と性格を認識し、それを他者の自我状態との関連において自在に変化させ、繰れるようになることがエコグラムの極意なのです。
 最後に、種類にもよりますが、スポーツ一般に必要な自我状態はAとFCと言われています。「根性」論ではなく、リラックスしながらプレーするために、Aを十分に機能させ、一番効果的な方法を駆使して冷静にコンスタントに練習し、試合になったら蓄積した力でFCを使って楽しくプレーすることが必要です。