競技スポーツの振興
スポーツ医科学(スポーツ障害の予防〜ストレッチを十分に〜)
臼井 正明
(大垣中央病院整形外科) |
整形外科的メディカルチェックとは、スポーツ選手の運動器の障害を軽症のうちに早期発見すること、危険因子を見い出し、未然に防ぐこと、体力や運動能力など現状を認識させることなどを目的として行われます。成長期のスポーツ選手のメディカルチェックでは、運動の適性をアドバイスすることも必要となる場合があります。 成長期のスポーツ選手の特徴は、まず第一に成長中であることです。骨には骨端という力学的に弱い骨の成長線があり、骨の強度も弱く、関節軟骨も厚く損傷を受けやすいこと、総体的な筋量が少なく、発揮できる筋力が弱いことなどの特徴があります。第2の特徴としては個人差が大きく、同じチーム内でも体格差、筋力差が存在します。 整形外科的メディカルチェックの項目として、視診ではスポーツに相応した体格、筋量があるかどうか、左右差、筋萎縮などをチェックします。発育期においては、骨と筋腱の成長の違いから筋腱付着部炎が生じやすく、外反肘、外反膝などのアライメントの異常は筋腱付着部炎などの障害を助長する因子となるため、上・下肢のアライメントの異常のチェックが必要です。 形態測定としては、身長、体重、体脂肪率、周囲径(頚部、上腕、前腕、大腿、下腿)測定をします。ボディコンタクトのあるスポーツでは、人の頚部周径と下腿周径は等しいとされているため、同じ周径までがんばってトレーニングする必要があります。 ついで可動域のチェックとして、弛緩性(looseness)テストを行います。これは、手関節、肘関節、肩関節、脊柱、股関節、膝関節、足関節の7大関節の可動域から身体の軟らかさを見るもので、通常は3/7〜4/7の間です。0/7〜1/7の選手は硬いと評価し、ストレッチをすすめ、6/7〜7/7は緩くて危険と評価し、筋力トレーニングをすすめます。 さらにタイトネス(tightness)テストとして、仰臥位での下肢挙上角と腹臥位での膝屈曲角度をチェックします。身体の硬い選手でも大腿伸筋群と屈筋群の両者とも硬いのは少なく、どちらかに偏っており、障害予防にはストレッチが必要です。 発育期においては、体の成長段階の違いと元来の柔軟性からloosenessテストやtightnessテストよりもalignmentテストの方が重要と考えられています。 |