競技スポーツの振興
スポーツ医科学(女子マラソンでの貧血〜ビタミンCをもっと!!〜)
牧野 和彦
(岐阜医療短期大学) |
思春期には、体格の向上だけで鉄の需要が約10%も増えると言われており、そこへさらにマイナスの要因が加わると鉄欠乏症に伴ういといとな症状が出てきます。ここではスポーツをする女性によく見られるスポーツ貧血について取り上げます。スポーツ選手の貧血ではめまい、どうき、息切れなどの一般的な症状だけでなく、「練習についていけなくなった」「トレーニング効果が上がらない」というような症状を訴えることがありますので、注意が必要です。 スポーツ選手にみられる貧血としては、鉄欠乏性貧血や溶血性貧血がよく知られています。赤血球中に存在する鉄分は体全体の約67%と言われ、その他肝臓や脾臓(ひぞう)に約27%貯蔵されています。この貯蔵鉄を使い尽くすと貧血症状を呈するようになります。つまり、一時的な鉄欠乏症ではなく、鉄欠乏状態が慢性的に続くことにより、鉄欠乏性貧血になります。 鉄は酸化ストレスをもたらすフリーラジカルの増加を促進する金属としても知られています。スポーツ貧血は、激しい運動によるフリーラジカルの発生を防ぐ、一種の防御反応とも考えられますが、鉄欠乏性貧血も酸化ストレスを引き起こすことが明らかにされています。鉄は筋肉中の酸素の貯蔵に働くミオグロビンというタンパク質などにも含まれています。貧血に至らない鉄欠乏でも持久力が落ちるのは。細胞でのエネルギー産生に、鉄を含む酸素が不可欠なためです。 スポーツを行うと鉄の需要も増加し、汗、尿や便などから失われる量も増えてきます。特に女子選手の場合、月経も大きな要因となります。持久力トレーニングを行う選手は一般人の2〜3倍の鉄分が必要とされていますので、鉄分摂取不足に注意しなければなりません。 赤血球は薄い膜で覆われているだけですので、比較的容易に壊れます。これを"溶血"といい、このために引き起こされる貧血を溶血性貧血といいます。運動時に足底を地面に強く踏みつけることで毛細血管内の赤血球が破壊され、貧血をきたします。トレーニング中の尿の潜血反応が陽性になるような場合には注意が必要です。 日常生活においては「鉄欠乏」を、長時間の運動時には「溶血」を意識することが重要です。鉄分とその吸収を助けるビタミンCを多く含む食事に心がけましょう。溶血への配慮は、ショックアブソーバー内臓の靴を利用して足への衝撃を和らげることが大切です。 |