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スポーツ医科学(ホッケー競技のスポーツ障害)

喜久生 明男 (きくいけ整形外科)
 岐阜県はホッケー王国といわれ、中学、高校、大学、社会人のそれぞれに日本一となったチームがあります。
 筆者を受診した女子ホッケーの選手の外傷と障害を調査したところ、外傷は31.8%、障害は68.2%であり、外傷では膝(半月損傷5名、じん帯断裂4名、打撲ねんざ3名)、大腿(大腿四頭筋6名とハムストリング5名の肉離れ)、腰部(腰椎ねんざ4名、坐骨神経痛2名)、足関節(前距腓じん帯断裂4名、ねんざ2名)、手・手指の順に多く、障害では腰部(腰部症15名、腰椎分離症7名、腰椎椎間板関節症1名)、膝(膝蓋骨の痛み10名、外旋不安定膝2名、腸けい靭帯摩擦症候群2名、その他5名)、下腿(シンスプリント8名、疲労骨折4名、前区画症候群3名、アキレス腱炎3名)、足(外頚骨障害6名、足根菅症候群3名、その他9名)、そして骨盤・股関節(骨盤疲労骨折4名、仙腸関節炎2名、腸腰筋拘縮等4名)、足関節(前距腓じん帯損傷後の不安定症3名、有痛性三角骨等3名)の順でした。これらの障害は下肢73.3%、腰部22.8%、上肢は4%であり、ホッケーの競技特異性が見られます。また、骨盤疲労骨折(恥骨下肢・坐骨下肢癒合部)も女子ホッケー選手に特徴的です。臀部などにランニング痛や歩く痛みがあれば、この疲労骨折を疑う必要があります。
 障害の予防と治療で大切なのは、何よりも早期発見と早期治療(安静を含め)ですが、障害の原因として多いのは、筋肉の拘縮を残したまま練習を続けていることですので、毎日の練習前後のストレッチングが一番大切だと思います。また、障害あれば、筋肉の萎縮が必ず起こっていますので、筋肉のトレーニングも必要となります。膝の外旋異常や足関節の前方動揺性は見逃されていることが多く、また、シンスプリントや足の障害の多くは過回内足と関連があり、足底板(内側ウエッジ、アーチサポート)による治療がよいので、整形外科的メディカルチェックが大切と言えます。
 ホッケー競技はスピードと持久力を要求されるだけでなく、ゴー、ストップ、ターンなどの素早い切り返し動作も要求され、しかもホッケー特有のスティックを用いて膝を曲げ、脊椎を前傾した姿勢で走り回るため、下肢と腰椎及び骨盤の負担が大きく、これらの部位での障害が多いのが特徴であると言えます。