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スポーツ医科学(水泳とストレッチング)

富成 伸育 (とみなり整形外科)
 先の「世界水泳」で平泳ぎの北島康介選手が金メダルならびに世界新を出したことはまだ記憶に新しいところです。そのことがきっかけとなり、町の水泳教室では北島選手にあこがれる子供たちが増え、水泳のすそ野が広がりました。最近の日本水泳の盛り上がり様はさながらかつての「水泳王国ニッポン」が蘇ったようです。
 また一方では熟年者の水泳競技もますます盛んで、1984年に創設された「日本マスターズ水泳協会」は今や4万人を超える参加者となり、アメリカを抜いて世界一のマスターズ水泳王国となりました。
 そもそも水泳は全身を総合的に使い、障害が比較的少ないため、熟年者の「生涯スポーツ」として理想的です。
 さて、水泳において最も大切なことは体の柔軟さですが、人間年をとるにしたがって体が硬くなります。しなやなさを失った体は衝撃をばねのごとく撥ね返す力を失い大きなけがのもとになります。けがを防ぐには筋肉や関節の柔軟性を高めることが必要で、そのためウォーミングアップ時のストレッチングが重要となります。
 ストレッチングのコツは息を吐きつつゆっくりと各関節を伸ばし、ゆっくり呼吸しながら伸ばしきった状態で数秒間維持します。そして力を抜きます。これを数回繰り返すのですが、水泳競技では特に首、肩、背中の筋肉、手首、股関節、太ももやふくらはぎそしてアキレス腱を念入りに行います。さらにストレッチングしながらイメージトレーニングまでできれば最高の準備運動になります。
 また練習のあと興奮し疲れきった筋肉や関節を鎮めるためのクールダウンにもストレッチングは有効です。静かにリラックスした状態でストレッチングを行えば、身体の回復効果だけでなく精神的な緊張からの解放も得られ、心身ともにリフレッシュしたさわやかさが得られるでしょう。
 以上マスターズ水泳を含めた「熟年者スポーツ」においてけがを防ぐためにストレッチングを中心にしたウォーミングアップが重要であることを述べてきましたが、大切なことはマイペースを守り体調に気をつけながら練習を行うこと、そしてそれぞれが自分の目標を持ちつづけること。これが長く競技を続ける秘訣かと考えます。