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スポーツ医科学(「使い過ぎ症候群」を防ぐには?)

西本 裕 (岐阜大学看護学科)
 バレーボールやバスケットボールのようなジャンプの繰り返し、サッカーのキックや野球のダッシュなどの繰り返しによって膝が痛くなることがあります。これは膝を伸ばす大腿四頭筋の力が膝蓋骨の上下や脛骨への付着部に集中することによって炎症を起こすものでジャンパー膝と呼ばれます。
 進行すると戻らない様な変化を起こすこともあります。背景としては膝の伸展機構の柔軟性低下が影響していることが多いので選手ごとにストレッチをしながら柔軟性を確認する必要があります。
 ウォームアップ後には症状が消えて練習ができても、活動開始直後、運動終了後に痛みの出る時期があり、この時期に適切な治療(ジャンプ、ダッシュ動作の休止、下肢の運動療法、局所のアイシング)を行えば、次のステージ(運動に支障をきたす疼痛のためにストレッチ中心となり、運動を休止せざるをえない)に進むことなく2ヶ月ほどで早期現場復帰が可能です。慢性化すると競技能力が落ちるだけでなく最悪、競技を断念せねばならず侮れません。
 同じような使い過ぎ症候群が若年ではオスグッド・シュラッター病として知られています。膝蓋腱の脛骨付着部の痛みが損傷をきたし部分断裂、微小骨折が起こり、それが原因で痛みます。身長の伸びが月に1cmを超える場合は発症危険時期ですので脛骨粗面(膝蓋腱が脛につく所)を押さえて痛くないかチェックするとよいでしょう。この圧痛が出始めた早期に徹底した病変部位の安静を確保できれば4〜6週間でスポーツ活動に復帰できます。
 無論、伸展機構のストレッチング、筋肉増強運動を休まないようにしましょう。軟骨が異常骨化すると成長終了後も痛みを残すことがあり、装具を必要としたりしてベストパフォーマンスは期待できません。
 使い過ぎ症候群で痛いところにステロイドを注射することがありますが組織の劣化や感染の危険から頻回には用いられません。
 最近五十肩などに使われるヒアルロン酸が有用かもしれないとの報告もありますが、科学的な確証はまだなく保険も未適応です。何より早期発見、早期対応を、また復帰時にいきなり他の選手と同様のジャンプをして再発させないよう段階的なトレーニングプログラムを組むことが大切です。