競技スポーツの振興
スポーツ医科学(突然死に至る不整脈)
渡辺 郁雄
(朝日大学) |
現在わが国では人口10万人に対して年間10.30人程度の心臓性突然死があるといわれています。またそのほとんどが心室細動という不整脈によるとされています。これは不整脈の中でも最も重症なものであり、血行動態的には心臓が停止したのと同じ状態になりますから、陥った途端に意識はなくなりやがて100%が死にいたります。唯一の治療法は心臓に200〜400J(ジュール、エネルギーの単位)の通電を施し、電気的ショックを与えることです。エネルギーが高いため、通電した瞬間に患者さんは"どすん"という鈍い音とともに少し飛び上がるような動きをします。 AED(自動体外式除細動器)というのは心室細動であるかどうかを自動的に見分けて、もしそうであればスイッチを押すだけで自動的に通電する装置です。心室細動であるかどうかも機械が見極めてくれることから米国ではこの機械はかなり普及しており、消防士、警察官だけではなく、一般の方にも使用が許可されており、これらの人々が使用することによってすでに相当の効果をあげております。 昨年7月には日本でも一般の方が使用してよいことになりました。これに伴い、最近開港した中部国際空港セントレアをはじめとした国内国際空港にはすでに設備されており、岐阜県でも数十台購入して県内各公共施設に設置しつつあります。いずれはある範囲の公共施設や人が多数あつまるところには設置が義務付けられるものと思われます。 スポーツの現場では特に持久性競技ではこうした不整脈が発生する可能性が高く、注意が必要です。私たちも競技の種類によってはこの機械を持参して救護にあたりますし、実際現場で使用したこともあります。 心室細動のよに心臓が停止または停止と同じ状態になった場合、4分半以内に電気ショックを与えると救命率は50%であるといわれ、以後治療開始が1分遅れるごとに救命率は7〜8%ずつ低下するとされております。救急車が到着するためには平均7分あまりかかるという統計があります。したがって、心臓発作を起こした周囲の人々がいかに迅速に対処するかは非常に大きな問題となります。より多くの方がAEDの使用法をマスターされることを望みます。特にスポーツの指導者をはじめとした関係者は、AEDの設置に努め、その使用法を熟知していただきたいと思います。 |