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スポーツ医科学(スポーツ時の熱射病)

宮本 洋通(朝日大学)
 暑い季節になってきました。この季節になると毎年のように熱射病による死亡者の記事が出ます。1番多いのは両親がパチンコなどに熱中して、子供を自動車内に放置して死なせたというものかもしれませんが、スポーツ活動によるものも少なくありません。逆にいうとスポーツによる死亡事故の中でも熱射病は大きな原因なのです。この欄でも4年前に1度、取り上げられているのですが、再び取り上げたゆえんです。
 熱射病は暑い環境で生じる障害の総称である熱中症(パチンコやスポーツに熱中するからこの名前がついたわけではありません)の病型の1つで他には熱失神、熱疲労、熱けいれんがあります。スポーツで主に問題となるのは、脱水による症状で、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などが見られる熱疲労と、体温の上昇のために中枢機能に異常をきたした状態で、応答が鈍い、言動がおかしい、意識がないなどの意識障害が起こり、死亡率の高い熱射病の2つです。
 ここで大事なことは熱射病が熱中症の他の病型、たとえば、熱疲労になり、それから起こるとは限らないことです。実際あれよあれよというまに悪くなり病院へ送って万全の治療を受けても死亡することがめずらしくないのです。また、暑く、湿度の高い日におこりやすいことは当然ですが、4月や11月にも発生することに注意が必要です。これは急に気温が上昇した日などに体が対応できないためと考えられます。また、発生場所は屋外だけではなく室内でもおこりうることも頭においてください。
 熱射病が疑われたら体も冷やしながら病院へ一刻も早く運ぶことです。冷却は全身に水をかけたり、濡れタオルを当ててあおいでください。近くに十分な水が見つからないときは、水筒の水、スポーツドリンク、清涼飲料水などを口に含み、全身に霧状に吹きかけてください。全身にまんべんなく吹きかけること、またこれらの液体は冷たい必要はありません。
 熱中症は予防が大切です。暑いときにおかしい場合は早めに休ませることです。意識障害があればただちに病院へ運ぶ必要がありますが、意識があっても応答が鈍かったり、言動がおかしかったりすれば同じようにする必要があります。病院へ運んだ結果が何でもなかったとしても、それは恥ずかしいことではありません。