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スポーツ医科学(月経周期)

三鴨 廣繁(岐阜大医学部)

  月経は周期的、生理的に起こる子宮内膜からの出血です。日本人女性の平均初経年齢は満12歳、平均閉経年齢は満50歳であるため、女性では約40年間、生理現象としての月経が認められます。月経周期は25〜38日を正常範囲とし、日本人では30日型が多いのが特徴です。月経持続日数は、3〜7日で、平均5日間です。月経血は純血液量にすると約60グラムで、月経血中の脱落内膜に含まれるフィブリノリジンという酵素の働きにより、フィブリノーゲンやフィブリンが破壊され、凝固しにくいのが最大の特徴です。したがって、月経の量が多かったり、月経中に凝血塊が含まれていたり、月経困難症がある場合は、女性性器に異常がある場合が多いため、恥ずかしがらずに積極的に産婦人科を受診されることをお勧めします。
 前述したような症状がある場合に、最も考えられるのは、子宮内膜症や子宮筋腫です。特に最近では、若い女性に子宮内膜症と診断される症例が増加しています。子宮内膜症とは、機能を有する子宮内膜組織が、子宮筋層、卵巣などの子宮内膜層以外の部分(異所性)に増殖を示す疾患です。したがって、正常子宮内膜が月経の時には、同時に異所性子宮内膜も性ステロイドホルモンに反応して月経を示すため、これが疼痛(月経困難症)の原因となることが多いようです。子宮内膜症の成因は、いまだに明らかではありませんが、月経血の腹腔内への逆流による子宮内膜の移植説を支持する事実が多いようです。
 また、最近では、子宮内膜症は、ダイオキシンなどの環境ホルモンと関係するという報告も多くなっています。特に、若い女性の子宮内膜症は、放置しておくと将来、不妊症や子宮外妊娠などの原因となることも多く、積極的に治療を受けることが望まれます。
 また、スポーツ指導者の中には、「激しいトレーニングをすれば月経がなくなるのは当たり前で、勝つためには仕方がない」といった持論をお持ちの方もみえますが、妊娠、分べんといった女性の将来を考慮して、「子宮萎縮や卵巣機能低下を防ぐためにも、3か月程度月経がなかったら産婦人科を受診するように勧める」という配慮も必要だと思います。
 今後は、スポーツ指導者は言うまでもなく、選手自身も月経について十分理解した上で、トレーニングを積むことが望まれます。