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スポーツ医科学(首のけがの応急処置

船橋 健司 (多治見市民病院整形外科)
 水泳の飛び込みや、ラグビー、器械体操等に多いのが首のけがです。なかでも頚髄損傷(けいずいそんしょう)は重篤な障害を残します。

 頚椎は7個の骨でできており、その中に頚髄が通っています。首に過度の伸展や屈曲が加わると、その中の脊髄まで損傷することがあり、これを頚髄損傷といいます。損傷を受けた頚髄の部位によって呼吸麻痺(まひ)や手足の麻痺が起こります。
 試合中に、頭や首を痛めて倒れたままのプレイヤーを発見したら、まず頭部外傷か頚髄損傷を疑ってください。決して体を動かしてはいけません。やむなくフィールドの外に出さなければならない場合には、頭から足までを棒のように動かさないように固定して、タンカに移動します。
 診察者はまずプレイヤーの頭側にしゃがみ込んで、頭を動かさないように指示し、意識状態をチェックします。「君の名前は?」、「今日は何月、何日?」、「今、何をしているのか分かる?」、「頭は痛くない?」、「吐き気はしない?」と聞き、どれかに該当するようなら頭部外傷による脳損傷が疑われます。引き続いて安静を保ち、救急車を呼びます。
 意識障害がなくて、首の痛みを訴える場合は頚髄損傷を疑います。頭と首は固定したまま動かさないようにして、上肢、下肢に異常がないか確認します。「手や足はしびれていない?」、「手と腕を曲げてごらん、伸ばしてごらん」、「膝を曲げてごらん、伸ばしてごらん」、「足をあげてごらん」と聞きます。意識障害がなく、手足が力強く自由に動くようなら、頚髄損傷の心配はありませんが、念のために、立って膝の屈伸を2、3回させてみます。ひとつでもできない項目があれば、安静を保ち直ちに救急車を呼びます。
 頚髄損傷のときには、痛みに対する反応が鈍くなります。両上下肢、胸腹部をつねって痛みに対する反応をチェックします。腹式呼吸をしている時には、かなり高度な頚髄損傷です。頚椎脱臼や骨折を伴っていることが多いので、体を移動させる時には細心の注意が必要です。
 ただ、軽度の損傷では、明らかな神経麻痺が見られないこともあります。いつもと違って手足に力が入らない時には、医療機関を受診してください。